起立性調節障害きりつせいちょうせつしょうがいと思ったら

目次

起立性調節障害きりつせいちょうせつしょうがいと思ったら

  • 頭痛
  • 立ちくらみ
  • めまい
  • 朝起きられない
  • 腹痛
  • 体がだるい
  • 吐き気がする

上記症状があり、「それは起立性調節障害かもしれません。」と言われたことはありますか。

もし、起立性調節障害かもしれないと思ったら、まず見直すべきは毎日の食事です。

特に、お子さんの体調不良で悩んでいるなら、親子で一緒に食事改善に取り組むことが非常に大切です。

親御さんがお子さんの状態を理解し、見守るだけでは十分ではありません。

実際に、親御さん自身も一緒になって、お子さんと同じようにタンパク質をしっかりと摂ることが重要なのです。

口先だけで「あれを食べなさい」「これをしなさい」と指示するのではなく、親御さんが率先して行動で示すことが、お子さんにとって何よりのサポートとなります。

お子さんだけにプロテインや鉄剤を飲ませようとしても、「美味しくない」「飲みたくない」と嫌がって、なかなか続きません。

親子で一緒に取り組むことで、お子さんも安心して食事改善を続けられるはずです。

もちろん、ご自身で情報を調べて対策できる方や、大人の場合は、今の食事内容を少しずつ変えていくことから始めてみてください。

起立性調節障害の改善例

藤川徳美ふじかわとくみ医師が書く「精神科医こてつ名誉院長のブログ」で、検索画面に「起立性調節障害」と入力すると、改善例がたくさん出てきます。

このブログでは、どのような対策をすればどれくらいの期間で改善が見込めるのか、具体的な症例とともに分かりやすく解説されています。

ぜひ一度、目を通してみてください。

ちなみに、ブログ内で「プロテイン*2」と表記されているのは、プロテインパウダーを1日に2回、朝と夕に摂取することを意味しています。

起立性調節障害とは、病気というより栄養失調

起立性調節障害は、英語ではOrthostatic Dysregulationと表記され、頭文字をとって ODオーディーと略されます。

人が立ち上がる際には、血液を体の下から上へと移動させる必要があります。

健康な人の場合、自律じりつ神経系の一つである交感こうかん神経が速やかに働き、血液を移動させて血圧を一定に保ちます。

しかし、ODの場合、自律神経の機能が低下し、血液のスムースな移動が困難になるため、血圧を維持することができません。

その結果、血圧が低下し、脳や全身への血流が悪化します。

これが、立ちくらみやめまいの原因となります。

また、血液によって運ばれる酸素の不足は、疲労感や顔色の悪化を引き起こす可能性があります。

ODは、第二次性徴が現れる思春期前後に発症しやすいとされています。

この時期は、体が著しい成長を遂げる時期であり、栄養需要が高まるため、栄養不足がODの一因となる可能性も指摘されています。

日本小児心身医学会のホームページでは、ODは病気として定義されています。

しかし、疾患というよりも、栄養不足による身体機能の不調と捉えることもできるかもしれません。

ODを改善するには

では、起立性調節障害の不調から抜け出すためには、具体的に何をすれば良いのでしょうか?

最も重要なのは、栄養状態の改善です。

特に、タンパク質と鉄分の摂取が欠かせません。

これらの栄養素は、赤身肉に豊富に含まれています。

しかし、毎日赤身肉を食べ続けるのは難しい場合もあるでしょう。

そのような場合は、市販のプロテインパウダーや鉄剤を上手に活用するのも一つの方法です。

従来の一般的な食事(糖質が多く、タンパク質が少ない。日本で言うバランスの良いとされる食事)を続けてきた人が、急にタンパク質の摂取量を増やそうとしても、消化不良を起こす可能性があります。

吐き気や下痢などの症状が現れることもあるため、少しずつタンパク質の量を増やしていくことが大切です。

まさに、食事内容を段階的に調整していく「食事トレーニング」と言えるでしょう。

もし、お子さんが起立性調節障害で悩んでいる場合は、親御さんも一緒になって食事トレーニングに取り組むことが重要です。

起立性調節障害の発症には、家族の影響が約8割認められるというデータもあります。

これは、家族間で食生活が似ていることが大きな要因と考えられます。

他の方法は効果が薄い

起立性調節障害の生活改善法として、よく「生活リズムを整える」「適度な運動をする」といった方法が紹介されています。

しかし、これらの方法は、特に症状が重い場合には、最初から取り組むにはハードルが高いかもしれません。

なぜなら、まず起き上がること自体が困難な場合も多いからです。

また、「塩分と水分を摂る」という方法も紹介されています。

しかし、塩分摂取によって血圧が持続的に上昇すると誤解している人もいるようです。

実際、塩分と水分はセットなので、一時的に血圧が上昇することはあますが、その過剰な塩分が排出されれば効果は持続しません。

なぜタンパク質が大事なのか

以前お話したように、人が立ち上がる際には、体は血圧を上昇させる必要があります。

この血圧上昇を担うのが、自律神経系の交感神経です。

交感神経が適切に機能するためには、アドレナリンをはじめとするカテコールアミンというホルモンが不可欠です。

そして、このカテコールアミンは、必須アミノ酸の一つであるフェニルアラニンから合成されます。

フェニルアラニンを含む様々なアミノ酸が、多数集まったものがタンパク質です。

一方、ご飯やパンなどの糖質には、アミノ酸はごくわずかしか含まれていません。

タンパク質の必要量

タンパク質の摂取量の目安は、1日に自分の体重×1gです。

体重50kgの方であれば、1日に50gのタンパク質を最低限の目標にしましょう。

ただし、注意が必要なのは、赤身肉100g=タンパク質100gではないということです。

例えば、牛もも肉100gに含まれるタンパク質は約20gです。

つまり、50gのタンパク質を摂取するには、牛ももステーキに換算すると250gが必要になります。

これを毎日続ける必要があるのです。

特に女性は、この量に驚かれるかもしれません。

しかし、体が本来必要としているのは、ここが最低ラインなのです。

また、タンパク質を摂取する際に気を付けたいのは、空腹時に手軽な糖質で済ませないことです。

糖質でお腹を満たしてしまうと、タンパク質を摂取するスペースがなくなってしまいます。

主食(ご飯、パン、麺類)は、これまでよりも量を減らすように心がけましょう。

鉄の必要性

私たちの体内には、酸素を運搬する役割を担う赤血球という細胞があります。

この赤血球の働きを支えているのが、赤血球の大部分を構成するヘモグロビンです。

ヘモグロビンは、鉄を含むヘムと、タンパク質であるグロビンから構成されています。

ヘモグロビンが不足すると(貧血)、十分な酸素を運搬できなくなるだけでなく、血液量が少ない場合には、先ほどお話したホルモンを各臓器に適切に届けることができなくなります。

ご存じのように、貧血になると、めまい、立ちくらみ、疲労感など、ODと類似した症状が現れます。

さらに、鉄はカテコールアミンの生成にも不可欠なミネラルです。

そこで、鉄分を効果的に摂取する方法ですが、医療機関を受診し、医師に相談して鉄剤を処方してもらうのが良いでしょう。

ただし、診察時にいきなり「鉄剤が欲しいです。」と伝えるのは避けた方が賢明です。

たまたま処方してくれる医師もいるかもしれませんが、自己判断で鉄不足と決めつけて受診すると、「医者は私だ。判断するのはあなたじゃない。」と医師の心証を害してしまう可能性があり、処方してもらえないことが多いでしょう。

まずは、「最近、立ちくらみがひどいのですが、鉄分は足りているでしょうか?」と症状を伝え、血液検査をしてもらうように相談しましょう。

また、食事から鉄分を摂取する場合は、肉や魚の赤身に含まれるヘム鉄を積極的に摂るようにしましょう。

ほうれん草や小松菜などの非ヘム鉄から必要な量の鉄分を摂取しようとすると、非常に大量に食べる必要があり、現実的ではありません。

お薬は効くのか

起立性調節障害の治療薬として、ミドドリン(先発品:メトリジン)やアメジニウム(先発品:リズミック)が処方されることがあります。

これらの薬は、末梢血管を収縮させることで血圧を上昇させる効果があります。

これは、体内で生成されるカテコールアミンというホルモンと同じ作用機序です。

薬の効果は、服用している間は血圧を維持できますが、薬の成分が体内から消失すると効果もなくなってしまいます。

これが、薬物療法だけでは十分な改善が見込めない理由の一つです。

薬によって一時的に血圧を上げるのではなく、体内でカテコールアミンが適切に生成される状態を維持する方が、より根本的な解決策となるでしょう。

ODでやるべきこと

まずは、毎日の食事を見直すことから始めましょう。

  • 糖質を控え、十分量のタンパク質を摂取する(体重×1g以上)
  • 鉄分をしっかり補給する

上記の2点を意識して、日々の食事を改善してみてください。

もし、お子さんが起立性調節障害(OD)と診断された場合は、ご家族全員でタンパク質不足の解消に取り組みましょう。

親子で協力し、焦らずに、時間をかけて食生活を改善していくことが大切です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次