「悪物」は誤解!? コレステロールは体に不可欠

健康診断で「悪玉コレステロールが高い」と指摘され、血管が詰まるイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

しかし、それは一面的な見方です。

目次

コレステロールの重要な役割

コレステロールは私たちの体にとって、とても重要な役割を担っています。

全身の細胞、特に神経を形作っていて、ホルモンなどの元になる、生命維持に欠かせない物質なのです。

実際には、コレステロールは決して悪者ではありません。

コレステロールが高い方が死亡率は低下

むしろ、近年の研究では、低すぎるコレステロール値が、がんや感染症による死亡リスクを高める可能性が示唆されています。

さらに、高めのコレステロール値が、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患のリスクを低下させるという研究結果も多数報告されています。

では、なぜ「悪玉コレステロール」という言葉が広まったのでしょうか?

今回は、その誤解を解き明かします。

誤解が生じた背景

1950年代のアメリカでは、心臓の血管が狭くなる狭心症や、詰まる心筋梗塞といった冠動脈疾患による死亡者が増えていました。

そのような状況下で、生理学者のアンセル・キーズ博士は、食事と心臓病の関連性に着目し、シンプルな仮説を提唱します。

コレステロール原因説

それは、動物性脂肪(バター、ラード、卵など)の摂取が血中コレステロール値を上昇させ、そのコレステロールが血管の内壁にたまるというものでした。

そして、コレステロール値が高ければ高いほど、血管への付着リスクが高まると考えたのです。

肉や脂質の多い食事が血中コレステロールを増やすという彼の理論は、「心臓病のコレステロール原因説」、現代では「コレステロール神話」とも呼ばれています。

世界7カ国共同研究

この理論を裏付けるため、キーズ博士は「Seven Countries Study(世界7カ国共同研究)」を実施し、食事中の脂肪と心臓病の間に関係があると結論づけました。

けれども、後になってこの研究には重大な欠陥があったことが明らかになります。

実際には、22カ国のデータが存在したにも関わらず、都合の良い7カ国 ‼ のデータのみが採用されていたのです。

コレステロールが心臓病の原因であるという仮説を強く信じるあまり、それに反する証拠は無視したと言わざるを得ません。

当時、この説に疑問を呈する医療従事者もいました。

しかし、アメリカの死亡原因第一位であった冠動脈疾患という大きな謎に対し、キーズ博士の理論はシンプルで分かりやすい答えを示したため、その後もコレステロール原因説を正当化しようとする多くの研究が行われました。

米国の食事目標

そして1977年、アメリカ上院特別委員会は、食生活指針「米国の食事目標」、通称「マクガバンレポート」を発表します。

この報告書では、「炭水化物の摂取量を増やし、脂質を減らす」「コレステロールを多く含む食品を控える」といった目標が掲げられました。

特に飽和脂肪酸(バター、ラードなど)は悪者とされ、植物油への切り替えが推奨されたのです。

コレステロールを下げる努力の末

私たちは、体内コレステロール値を下げるために、ありとあらゆる努力を重ねてきました。

コレステロールが高い食品は控える。

卵は1日1個まで。

バターよりもマーガリンが健康的であるとされ、外食先の朝のパンにはマーガリンが用意されるようになりました。

牛乳も低脂肪乳が選ばれるようになりましたよね。

食事や運動で下がらなければ、お薬が処方されます。

こうしてコレステロール値を下げる努力をしましたが、冠動脈疾患が顕著に減少するという効果は認められませんでした。

医師たちがコレステロール値を下げるための取り組みを始めてから半世紀以上が経過します。

だが、その効果は今もなお明確には現れていません。

アメリカでは依然として心臓病が死因の第一位であり、日本でも第二位という状況です。

これらの事実から、冠動脈疾患の主原因が、単純にコレステロール値が高いことにあるとは断言できないことがわかります。

コレステロールは今も悪者

では、なぜ現代においても、コレステロールは依然として悪者扱いされているのでしょうか。

何度も誤りが指摘されている「脂肪やコレステロールの大量摂取が心臓疾患を引き起こす」という仮説が、いまだに根強く信じられています。

つい最近も、ある心臓血管外科の先生が「コレステロールはできるだけ低い方が良い。生まれたばかりの赤ちゃんのコレステロール値が低いのは、本来あるべき姿なのだ」とおっしゃっていました。

その背景には、プライドや既得権益、そして根深い偏見といった要因が複雑に絡み合っているのではないでしょうか。

医療現場で繰り返される事

多くの医療従事者は、学生時代にコレステロールが血管壁を厚くする有害な物質であると教え込まれます。

そして、臨床の現場に出ると、LDLコレステロール値が基準値を超えている患者に、当然のように薬剤が処方されます。

患者さんにお薬を納得して飲んでいただくために「コレステロールが高いと良くないですよ。しっかりお薬を服用しましょう。」と説明します。

このような経験を繰り返すうちに、コレステロール悪玉説が揺るぎない事実として認識されてしまうのかもしれません。

一度、コレステロール悪玉説の方に傾いてしまうと、反対の立場に戻るのはかなり難しくなってきます。

スタチンの莫大な売り上げ

さらに、「スタチン」をはじめとするコレステロール低下薬は、年間数百億ドル規模の巨大な市場を形成しています。

製薬業界は、この市場を維持・拡大するために、積極的なマーケティング活動を展開しています。

たとえコレステロール神話が事実と異なっていたとしても、繰り返し声高に主張されれば、いつしか多くの人がそれを真実として受け入れてしまう可能性があります。

まさに、現代のコレステロールと心臓病の関係においては、そのような状況が生まれているのではないでしょうか。

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