LDLコレステロールが驚異の300mg/dL!と、病院で二度見されるほどの高い数値を叩き出しているマツモトです。
前回の記事「「悪物」は誤解!? コレステロールは体に不可欠」では、コレステロールが私たちの体にとって、どれほど重要な存在であるかをお伝えしました。
しかし、通常、「LDLは悪玉コレステロール、HDLは善玉コレステロール」という表現がされています。
今回は、この通説をくつがえし、本当に注目すべき検査項目、「中性脂肪」と「HDLコレスロール」について、さらに深く掘り下げて解説していきます。
コレステロールを運ぶ
前回は、コレステロールがあらゆる細胞にとって不可欠な存在であるというお話をしました。
中でも、脳の神経細胞にとってコレステロールは特に重要です。
しかし、神経細胞自身ではコレステロールを合成できません。
そのため、体内で生成されたコレステロールは、血液の流れに乗せて必要とする場所に届ける必要があります。
このコレステロールの運び屋こそが、LDL(低密度リポタンパク質)やHDL(高密度リポタンパク質)なのです。
コレステロールは水に溶けない性質を持つため、LDLやHDLといったリポタンパク質の粒子が、コレステロールの周りを覆って運搬している、というわけです。
LDLとは
ですからLDLは、コレステロールそのものではありません。
そして、「悪玉」などというイメージとは裏腹に、とても重要な役割を担う味方なのです。
肝臓や皮膚などで作られた大切なコレステロールを、脳の神経細胞をはじめとする必要な場所へと届ける、まさに生命維持に不可欠な働きをしているのです。
HDLとは
HDLもLDLと同じく、コレステロールを運搬するリポタンパク質の仲間です。
LDLとHDLの主な違いは、そのサイズと機能にあります。
わずかにコレステロールの割合が多く、そのため少し大きくて軽いのがLDL。
HDLは、他の運搬体(VLDLなど)と脂質(コレステロールを含む)のやり取りをしながら、血液中の脂質の量をこまかく調整する役割です。
そして、コレステロールをあらゆる組織から肝臓に運び込むことも担っています。
なぜ、LDLコレステロールは悪玉とされるのか?
それは、まずコレステロールが悪者という前提があります。
そして、コレステロールを肝臓から運び出すLDLは、血管壁に蓄積し、動脈硬化のリスクを高める可能性があるため、「悪玉」とされています。
つい先日、目にした記事、「医者が教えるLDLコレステロールが高い人が…」や「1万人を60年間調べて分かった…」といった記事でも、LDLはコレステロールを血管壁に持っていくから「悪玉」で、血液中からコレステロールを肝臓に運び込むHDLは「善玉」であるといった説明がなされていました。
しかし、これらの記事では、まずコレステロールが大事なものであるという概念がすっぽり抜けてしまっています。
また、LDLコレステロールの粒子サイズや機能といった重要な側面については全く触れられておらず、その説明は本質を捉えているとは言えません。
LDL粒子の大きさ
実は、悪玉として問題視されているのは、コレステロールそのものではありません。
コレステロールを運搬するリポタンパク質の粒子、すなわちLDLやHDLといった物質の大きさや質なのです。
LDLというリポタンパク質の粒子には大小があり、大きいサイズのLDL(大粒子LDL)であれば、血管壁への影響はほとんどありません。
しかし、サイズが小さくなる(小粒子LDL)と、イメージされている通り、血管内壁に侵入するリスクが高まります。
さらに、このLDL粒子が酸化したり、糖化したりすると、本来の役割であるコレステロールの運搬と必要な場所への分配機能が著しく低下してしまうのです。
大きさを決めるカギ
LDLコレステロールは、粒子が小さくなり、さらに酸化して本来の機能を果たせなくなった時、初めて「真の悪玉」となります。
そして、この変化の鍵を握るのが、まさに「糖質」!
食事中の炭水化物が多いと、小型のLDL(小粒子LDL)が生成されやすくなります。
加えて、炭水化物の摂取は血糖値を上昇させ、その高血糖状態が小粒子LDLの糖化を促進してしまうのです。
見るべき検査値は
健康診断などで、LDLコレステロールの数値が基準値より高いと、どうしても不安になってしまいますよね。
しかし、どうか落胆しないでください。
LDLコレステロール高値というのは、むしろ、あなたが健康的に長生きできる可能性かもしれません。
では、体にとって非常に大切なコレステロールがきちんと運ばれているか、つまりLDLがその役割を十分に果たせているかを推測するためには、どの検査項目に注目すべきなのでしょうか?
それは、「中性脂肪」と「HDLコレステロール」の数値です。
中性脂肪の値
中性脂肪は、糖質の摂取量に大きく左右されるため、できる限り低い数値を目指すべきです。
一般的な基準値は30~149mg/dLとされていますが、空腹時(12時間絶食後)の測定では、100mg/dL以下が望ましいです。
さらに低い数値ならば、小粒子LDLに変化する割合も低くなるために、理想的です。
ここで注意して欲しいことは、中性脂肪を減らすために、決して食物脂肪を減らしてはいけません。
脂肪のカロリーを減らした分、糖質が増えて、どんどん中性脂肪の値は上がります!
HDLコレステロールの値
一方、血液中の脂質バランスを整える役割を持つHDLコレステロールは、高い方が理想的です。
基準値は40mg/dL以上とされています。
HDLコレステロール値を高めるためには、糖質摂取を控え、適度な運動を習慣にすることが重要です。
食事で気を付けること
大事なコレステロールが必要な場所にしっかり届くようにするには、「高タンパク質」「高脂質」「低糖質」の食事を心がけることが大切です。
低脂肪食にしてしまうと、糖質を摂りすぎることになってしまいます。
逆に、積極的に脂肪を摂るようにして、糖質を控えましょう。