わたしが小さい頃、「がん」はとても恐ろしい病気でした。
かかったら最後、助かる見込みはまずないと多くの人が思っていたことでしょう。
それから40年近くたち、現代は2人に1人は「がん」にかかる時代と言われています。
2023年の人口動態調査を見ても、悪性新生物<腫瘍>が死因の第一位。

1981年(昭和56年)以降、「がん」は脳血管疾患(脳の血管がつまる脳梗塞や脳の血管が破れるくも膜下出血など)を抜き、日本人の命を最もおびやかす病となっています。
「がんは治る時代になった」とも聞きますが、「がん」になる人は減少するどころか、増え続ける一方です。
「医療は進歩しているはずなのに、なぜこんなにも増え続けているのだろう?」と、思いませんか?
がん発生の大きな要因は「大量の糖質」
水野雅登医師は、『糖尿病の真実 なぜ患者は増え続けるのか』(2021年、光文社新書)の中で次のように書いています。
今まで、一般的にはがんの原因として、遺伝子が傷ついてブレーキが壊れた状態になることで増え続ける、という説明がされていました。しかし、今では「そんな説明は嘘八百」ということに気づく人が増えつつあります。「遺伝子のキズ」はなく、「過適応」によって「がん細胞」は発生します。そして、適応の過程で、「ブレーキを外す」ことがほぼ確実に起きるので、増殖が止まらなくなります。そして果てしなく増えていくのが、がんです。
たくさんの糖質を疑うことなく食べ、そしてがんを発症した何人もの人たちに、私はがんの告知をしてきました。多くの人たちは、自分が毎日毎日、大量の糖質摂取をしている事に気づいてすらいません。そして、その自らとった大量の糖質が、がんを育ててしまうことを知らないまま、ある日突然、がんの告知を受けます。
私も現代において、がん患者が増加している背景には、食生活の変化が深く関わっているのではないかと考えています。
感染症を原因としない多くのがんにおいて、特に「糖質の摂りすぎ」は無視できない要因の一つです。
もちろん、「遺伝」ががんの発症リスクを高める可能性は否定できません。
しかし、日々の食習慣が積み重なっていく影響の方が、より大きいのではないでしょうか。
共働きの増加
ここで、以下の図をご覧ください。

日本の実質賃金は、この30年間ほぼ横ばいであるのに対し、他の主要4ヶ国では30%近くも上昇しています。
世界では物価が上昇していますが、日本国内では長らく賃金の伸び悩みが続いています。
女性も家計を支えるために働くことは、もはや珍しいことではありません。
その結果、共働き世帯が増加しました。
栄養のかたより
時間に追われる現代社会においては、食事に時間をかける余裕がなく、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで手軽に購入できる食品で済ませる人が増えています。
その際、まず選ばれるのはパンやおにぎり、インスタントラーメンといった、糖質が主体の食品であることが少なくありません。
このような経済状況と生活様式の変化が、日本人の食生活を徐々に簡略化、栄養バランスの偏ったものへと変えてきているように感じます。
がん細胞のエネルギー
さて、ここで驚くべき事実をお伝えします。
がん細胞が最も好む栄養源、それはなんとグルコース(ブドウ糖)なのです。
「え、そうだったの?」と思われた方もいるかもしれません。
実はこれ、医学の世界ではよく知られた話で、100年ほど前に、オットー・ワールブルグ博士によって発見された重要な性質なのです。
しかも、がん細胞は正常な細胞と比べて、はるかに多くのグルコースを取り込みながら生き続けています。
この「がん細胞が正常細胞よりも大量のグルコースを取り込む」という特性を応用した検査が、がんの位置や状態を精密に調べるPET検査です。
PET検査では、がん細胞が存在する部位が、まるで光を放つように画像に映し出されます。
つまり、私たちが糖質を摂取すると、その糖質は、まるで優先的にがん細胞へと届けられるようなイメージなのです。
まだ知らない小さな芽のようながん細胞が体の中にあったとして、毎日せっせとがん細胞に栄養を与え、大切に育てているようなものだと考えると、ゾッとしませんか?
「糖質」が「脂肪」に変わる
ここで誤解していただきたくないのは、問題は「糖質」の摂りすぎであって、「脂肪」ではないということです。
「油ものを食べると太る」と思っていませんか?
実は、余った「糖質」が「脂肪」へと変化するのです。
「脂質」をたくさん摂取したからといって、それが直接、内臓脂肪になるわけではありません。
体内で処理しきれなかった「炭水化物」が、「脂肪」へと姿を変えるのです!
もちろん、「糖質」も「脂質」も、過剰に摂取すればしっかりと体脂肪として蓄積されます。
ビッグファーマの影響
100年以上も前から、がん細胞がグルコースを主なエネルギー源とすることが分かっているにもかかわらず、なぜ世間では「糖質の摂りすぎ」のリスクがあまり知られていないのでしょうか。
その背景には、医療を取り巻く複雑な構造があるのかもしれません。
巨大製薬企業(ビッグファーマ)の影響力が指摘されることもあり、情報の発信や研究の方向性に、経済的な要因が作用する可能性も否定できません。
先日ご逝去された森永卓郎氏も、著書『がん闘病日記』の中で、がん治療に関わる市場の大きさに言及されていました。
確かに、比較的新しい抗がん剤には、とんでもない高額なものがあります。
例えば、日本市場でも使用されているある抗がん剤の注射液(4mL)は、1つあたり21万4498円です。
通常は1回8mL使うので、その費用は約42万8996円にもなります。
これはあくまで1回分の薬剤費であり、年間で17回投与すると、単純計算で約729万円になります。
製薬会社にとって、がん患者さんの増加は売上増加につながるという側面は否定できません。
そのため、「がんの早期発見が重要」とはいわれますが、「がんにならないための予防」という視点からの情報は、十分とは言えない現状があるのではないでしょうか。
私たちは、早期発見だけでなく、予防の重要性についても、もっと目を向ける必要があるのかもしれません。
当たり障りのないがん情報
また、国立がん研究センターが運営する公式サイト「がん情報サービス」には、以下のような文章があります。
生活習慣や感染など、さまざまな要因でがんになると考えられています。現在のところ、日本人を対象とした研究では、喫煙(受動喫煙を含む)、過度の飲酒、塩分や塩辛い食品をとりすぎる・野菜や果物をとらない・熱すぎる飲み物や食べ物をとるなどの食生活、太りすぎ、痩せすぎ、運動不足、ウイルスや細菌への感染ががんの要因になるとされています。
引用:がんという病気について, 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ, 更新年月日2024年09月02日 , https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html
上の文章にも、「炭水化物」や「糖質」という言葉は登場していません。
これでは、一般の方は、「糖質」こそが問題の本質であることに気づきにくいのではないでしょうか。
糖質制限のススメ
がんになって大変な思いをしないために、今日から予防に力を入れましょう。
そのために最も重要なことの一つが、「糖質の摂りすぎ」を見直すことです。
ほんの少しの量だと思っていても、1日3回の食事や間食で積み重なると、糖質は過剰摂取になりがちです。
また、現代人の食生活ではタンパク質が不足しがちです。
糖質を控えた分、空腹を感じやすくなるため、積極的にタンパク質を摂っておぎないましょう。
まずは、食事で糖質の代わりに動物性タンパク質を意識して取り入れることから始めてみませんか。
タンパク質をしっかり摂るには、確かにある程度費用と手間がかかるかもしれません。
もし、「何を食べればよいかわからない」と迷う場合は、卵を1日5個(タンパク質30gほど)食べるようにしてみたらいかがでしょうか。