「 The Dark Side of Statin 」
このタイトルは、まるで映画『スター・ウォーズ』の
テーマのように響き、魅力的に聞こえるかもしれません。
しかし、これはフィクションではなく、
ある薬剤の知られざる側面について書かれた本のタイトルです。
自分では飲まない薬
私が決して飲みなくないなと思う薬があります。
それは「スタチン」と呼ばれる薬。
LDLコレステロールが高い時に処方される薬です。
後発品には「〇〇〇スタチン」という名称がついています。
肝臓に作用してコレステロールの生成を抑える働きがあります。
コレステロール悪玉説は広く浸透しているので、
現在も世界中で、多くの人々が服用していることでしょう。
スタチンの副作用
ただし、この「スタチン」には多くの副作用があります。
その1つに肝機能障害があります。
この薬は肝臓に作用するため、
肝臓に炎症が起こっていないか、
肝機能が正常であるかを定期的に検査するようになっています。
認識されにくい副作用
「スタチン」の副作用で最も有名で恐ろしいのは、「横紋筋融解症」でしょう。
これは文字通り、筋肉が溶けてしまう病態です。
ここまで重症なケースになる人はごく稀ですが、
より軽度な「筋肉痛」は、実際には
かなり多くの人に起こっている可能性があります。
しかし、足がつったり、手足の痛み、肩こりなどは
日常生活でも時々起こるため、
「スタチン」の副作用として認識されにくいのではないでしょうか。
これは薬を服用している患者さん自身だけでなく、
処方する医師や薬を渡す薬剤師も同様です。
横紋筋融解症のことは念頭にあっても、
筋肉痛に関してはスタチンの副作用を疑うケースは少ないように思います。
知られざる副作用
日本ではほとんど知られていませんが、
「スタチン」には「記憶障害」という副作用も存在します。
この副作用について詳しく説明したのは、
冒頭にあげた書籍『 The Dark Side of Statin 』(Duane Graveline MD, MPH, 2017)
の著者、ドゥエイン・グレーヴライン博士です。
彼は元アメリカ空軍の軍医であり、宇宙飛行士という経歴の持ち主でした。
ある時、健康診断でコレステロール高値を指摘され、
リピトール10mgを服用しました。
しかし、6週間後には精神に異常をきたし始めます。
混乱した様子で近所をうろつき、妻の顔が分からなくなり、
隣人との立ち話を覚えていないといった症状が現れたのです。
グレーヴライン博士は、この記憶障害がコレステロール低下薬に
よるものだと疑い、服用を中止しました。
しかし、1年後の健康診断で再びコレステロール低下薬の服用を指示されます。
今度はリピトール5mgに減らして服用しましたが、
6週間後に二度目の記憶喪失に陥ってしまいます。
今回の症状は前回よりも深刻でした。
それでも、診察した医師は「スタチンにそのような作用はない」と、
記憶障害との関連を否定しました。
スタチンと記憶障害の因果関係を解明したいと考えたグレーヴライン博士は、
全国の新聞社に同時配信されているコラムにメールを送りました。
すると、同様の経験をした読者から何百通もの手紙が届いたのです。
時間差で現れる副作用
一般的に、薬の副作用は薬を飲み始めて
そんなに時間が経ってない時に現れることが多いです。
たとえば、消炎鎮痛剤のロキソプロフェンを飲んで胃が痛くなれば、
「あの薬のせいだ」とすぐに気づくでしょう。
しかし、「スタチン」の副作用はこのような現れ方をしないものがあります。
服用開始から数年、あるいは10年!以上経ってから、
突然、副作用が現れることがあるのです。
もし、ずっとスタチンを飲み続けている方が
急に足に力が入らなくなったとします。
これまで問題がなかったために
「年を取ったせいだろう」と片付けてしまいがちです。
このように、因果関係が分かりにくいため、
スタチンの副作用であると気づかれないケースが多いと考えられます。
多くの副作用
上記以外にも、副作用は挙げればきりがありません。
ED(勃起不全)、脱毛症、皮膚乾燥、消化不良、味覚異常、
舌のしびれ、手足のしびれ、関節痛、めまい、
耳鳴り、うつ、帯状疱疹、頻尿、脳梗塞。
医薬品メーカーに報告が上がっているものだけで
これだけあるのですから、
一見関連がないとされる症状に悩まされている
ケースも少なくないかもしれません。
副作用からみえること
これらの多くの副作用をみて、何か気づきませんか?
そうです!
これらは多くの人が悩んで病院を受診するような症状ばかりですよね。
つまり、コレスロールを下げると、
生気がなくなり、病気になりやすくなることにつながっている可能性があるのです。
コレステロールの重要性
以前にも述べたように、全ての細胞にとってコレステロールは
欠かせない存在でしたね。
特に、脳の神経細胞にとってはとても重要です。
薬によってコレステロールを安易に下げてしまうと、
思いもよらぬ副作用が現れることがあります。
コレステロールは捨てるではなく、むしろ拾いに行く心持を大切に。